特別展「茶の湯」2017レビュー|楽しみ方とおすすめの名椀ご紹介

特別展『茶の湯』2017のレビュー。楽しみ方や関連情報も掲載。

最終更新日:2017年8月16日

茶の湯展は6月4日(日)まで

東京国立博物館で開催中の特別展『茶の湯』さっそくいってきました。

楽しみ方と関連情報、展示作品のご紹介をいたします。

茶の湯展は展示替えが多いです。
噂の「曜変天目(稲葉天目)」の展示期間は終了しました。
見たい方は、静嘉堂文庫の展覧会『かおりを飾る 珠玉の香合・香炉展』(2017年6月17日〜8月13日)にて出品予定です。
静嘉堂文庫は多摩川近くの閑静な場所にあります。ゆっくり拝観できますよ。

※もうひとつの曜変天目は、大阪の藤田美術館で公開中です。
藤田美術館『ザ・コレクション』展 6月11日まで

出展される国宝と重要文化財の茶碗をみやすくリストにしました。
出展される国宝・重要文化財茶碗リスト

特別展『茶の湯』レビュー

平日の朝一(9:30)に行きましたが、比較的空いていてゆっくり鑑賞できました。
開場までは少し並びましたが、会場内は混みすぎることもなく普通の展覧会。
14:00過ぎに東京国立博物館を出たときも、チケット売り場に行列はありませんでした。

土日であればチケット売り場は間違いなく混みますので、インターネットで購入したほうがいいでしょう。
電子チケットはスマホ画面を表示するだけで入場できますし、半券も貰えます。
オンラインチケット

展示構成は、いかにも国立博物館らしい構成になってました。

「茶の湯の全体像を通観する」
とあるように、美術品として茶の湯の名品を展示するだけではなく、日本における『茶の湯』の歴史や文化を知ることができる構成です。
基本的には時系列。

エリアは5つ。

1.足利将軍家の茶湯ー唐物荘厳と唐物数寄

抹茶を喫する茶道の源流は中国にあります。
最初は日本製の茶碗は存在せず、中国の貴人たちが愛した茶碗が日本でも好まれました。
特に「天目」という種類の茶碗ですが、是非本物を観て欲しい。
写真で見るイメージよりも、かなり小ぶりです。
形も肌も大きさも、すべてが美しい。

天目の最高峰、「曜変天目」も展示されています。
曜変天目は世界に4碗しか現存せず、すべてが日本にあり、3碗が国宝に指定されています。
今回展示されているのは、国宝の稲葉天目
世田谷の静嘉堂文庫所蔵なので、私も過去に何回か拝見しています。
いつみても美しいですね。

茶の湯『特別展』では、この曜変天目を筆頭に、油滴天目、玳皮盞天目(たいひさん)、灰被天目、黄天目など、数々の天目茶碗が展示されています。
個別にはほとんど拝見したことがありますが、一度にこれだけ天目茶碗が揃うのはまず無いですね。
もちろん初めて拝見した茶碗もたくさんありました。


こちらは中国南宋時代、建窯の「建盞(けんさん)」。

黒く細い銀色の釉薬が兎の毛のようにみえることから、中国では「兎毫盞(とごうさん)天目」、
日本では稲穂の禾(のぎ、伸び始めの稲穂)「禾目(のぎめ)天目」と呼ばれる。
曜変天目、油滴天目に次ぐとされてきた名椀です。



2.佗茶の誕生ー心にかなうもの

天目のような由緒正しい美しい茶碗から、次第に二級品や日常使いとされていた茶碗にも目が向けられます。
「佗茶」のはじまりです。

佗茶の創始者、村田珠光が愛した珠光天目は、先にみた「天目」と違うことが素人目にもわかります。

肌もざらざらしていますし、形も少しゆがんでいる。何より「建盞」の天目からはあふれ出てくるような気品を感じますが、それがありません。
一級品の美しさにはない美しさを見いだした「佗茶」のはじまりにふさわしい名椀です。

次の「白天目」は、なんと日本国内で焼かれた天目茶碗。

中国から輸入していただけの茶碗が、国産されるようになります。
産地はもちろん瀬戸。
国焼では「瀬戸」だけが正当な産地とされていました。
この白天目は、本場「天目」の「写し」として作陶されました。
次第に写しではなく日本は独自の茶碗を作り始めますので、この作品は非常に珍しい。

そして、高麗茶碗の優、大井戸茶碗です。
この画像の作品は、大井戸茶碗の最高峰「喜左衛門

茶碗は大別すると、唐物(中国)、高麗(朝鮮)、国焼(日本)の3種類となりますが、このころ早くもこの3つが揃うことになります。
高麗茶碗は、朝鮮王朝時代に日常使いの器や祭器として作陶されたものです。
天目のように「茶碗」として生まれたわけでも、貴人が使用していたわけでもありません。
このような器を「茶碗」と見立て、「天目」に勝るとも劣らないような価値を見いだしたのも「佗茶」の特徴のひとつでしょう。

井戸茶碗をみるときは、必ず高台脇をみてください。
釉薬が縮れた梅花皮(かいらぎ)は、井戸茶碗のおおきなみどころのひとつです。

3.佗茶の大成ー千利休とその時代

戦国時代(安土桃山時代)から江戸初期は、日本国内の茶碗作り最盛期です。
国宝・卯花墻(うのはながき)は美濃で焼かれた志野茶碗の優品。

誰もが知っている千利休や、彼が長次郎とはじめた樂焼
利休の弟子であり戦国武将の古田織部がはじめた織部焼
瀬戸黒など瀬戸焼の茶陶。
高麗茶碗も、日本からの注文により茶陶として焼かれるようになります。
ほか、個人の作家が出てくるのもこの時代です。
特に有名なのは、江戸時代初期の芸術プロデューサー本阿弥光悦
本展にも出展されています。

樂焼きは本展でも名品が展示されていますが、是非「茶碗の中の宇宙 樂家一子相伝の芸術」展へもお出かけください。

4.古典復興ー小堀遠州と松平不昧

茶人である小堀遠州の他、徳川将軍家をはじめ各地の有力大名が茶の湯の名品を蒐集し、お庭焼きなど献上品や交易品として茶陶の製作がはじまります。
・三好粉引などが有名

5.新たな創造ー近代数寄者の目

明治に入ると茶の湯は衰退期になりますが、数寄者とよばれる人たちが茶の湯の名品を蒐集、その多くは現在の美術館などのコレクションの原型となり、名品が散逸したり失われてしまうことなく現在まで続く大きな要因のひとつとなりました。

この展示コーナーは展示替えが激しいので、目当ての品がある方はホームページでチェックしていきましょう。

例えばこの「鈍太郎」は、4月25日〜5月7日までの展示。

個人的に茶碗が特に好きなので、茶碗ばかり取り上げていますが、展覧会はあくまでも『茶の湯』。
茶碗だけではなく、お茶に関わるさまざまな名品が展示されています。


途中、茶室「燕庵(えんなん)」を原寸大で再現した展示があります。
ここのみ写真撮影OK。
最近こういう展覧会増えてきました。

1点だけ、個人的には「音声ガイド」が残念でした。
音声が落語家さんだったのですが、軽い感じの落語家さんではなくもっと「茶の湯」にふさわしい威厳のある声の方であればよかったのですが。。
コラボしている近代美術館の樂茶碗展のほうでは、中谷美紀さんと当代の樂吉左衛門さんの音声ガイドが素晴らしかったので、少し期待外れでした。


おすすめの名椀

茶碗鑑賞をはじめて15年の私が特に気になった名椀をご紹介。
超有名な茶碗は「目録」に丸い印がついてる重要文化財や国宝指定されている茶碗ですが、ここではマイナーな茶碗だけをご紹介。

黄瀬戸茶碗

瀬戸で焼かれた和物茶碗の初期の作例として非常に貴重な一椀。
樂焼の長次郎の初期の作品のような端正の取れた美しい形とあまり見慣れない黄色い肌が魅力です。

赤樂茶碗 銘白鷺

長次郎の樂茶碗の最も初期の作品とみられる一椀。
造形も素朴。
ろくろを使わない樂茶碗の初期の作品として納得できる形。
赤樂茶碗の特徴である赤い土と透明の釉薬が絶妙なかせた風合いを出している。
長次郎以降の赤樂茶碗は透明釉がもう少し濃くなり艶がでるので、長次郎のこの茶碗は「土」そのものの美しさを楽しめる珍しい作品。

黒樂茶碗 銘利休

長次郎の黒樂茶碗
とても小ぶりで美しく、是非直接観て頂きたい一椀。
思わず手に取りたくなる、「茶碗」として完成された端正の取れた気品ある作品。

高取面取茶碗

現在の福岡県、筑前の国の大藩である黒田藩の藩窯として栄えた「高取窯」で焼かれた一椀。
小堀遠州の好みを反映している。
この写真ではわからないが、茶碗の胴の部分の下側がぐるっと面取りされている。
このようなのははじめてみました。
端正な姿に似合わず、黒と黄色の大胆な片身変わりが美しい。

国宝・重要文化財の茶碗一覧

なんと国宝4碗、重要文化財24碗が展示されます。

『国宝 曜変天目 稲葉天目』~5/7
『国宝 油滴天目』
『国宝 大井戸茶碗 喜左衛門井戸』4/28~
『国宝 志野茶碗 銘 卯花墻』

『重文 志野茶碗 銘 広沢』4/25~5/7
『重文 色絵金銀菱重茶碗』5/9~5/21

『重文 油滴天目』 ~4/23
『重文 赤楽茶碗 銘 無一物』~5/7
『重文 白磁金彩雲鶴唐草文碗』4/25~
『重文 柿釉金彩蝶牡丹文碗』 5/9~
『重文 瀬戸黒茶碗 銘 小原木』 5/9~
『重文 奥高麗茶碗 銘 三宝』 5/16~

『重文 青磁輪花茶碗 銘馬蝗絆』
『重文 玳玻盞 鸞天目』
『 重文 油滴天目(九州国博蔵)』
『重文 木葉天目』
『重文 灰被天目 銘 虹』
『重文 白天目』
『 重文 大井戸茶碗 細川井戸』
『重文 青井戸茶碗 柴田井戸』
『重文 雨漏茶碗』
『 重文 粉引茶碗 三好粉引』
『重文 黒楽茶碗 銘 ムキ栗』
『重文 黒楽茶碗 銘 俊寛』
『重文 黒楽茶碗 銘 時雨』
『 重文 鼠志野茶碗 銘 山の端』
『重文 絵唐津菖蒲文茶碗』
『重文 色絵鱗波文茶碗』

国宝と重要文化財の茶碗だけでこの数です。
いずれも必見の名椀ばかり。
期間限定の展示も多く、5月7日までの「稲葉天目」「無一物」は特に必見。
4月28日からの「喜左衛門井戸」も

茶碗以外にも『国宝 青磁下蕪花入』や『重文 青磁鳳凰耳花入』などの名品も展示。
さらに絵もたくさん展示されていますが、その多くが国宝や重要文化財に指定されているという贅沢な展示内容となっています。

国宝指定の茶碗

日本の国宝に指定されている茶碗は、下記8碗
今回の展覧会では、上から4碗が展示されます。

・志野茶碗 銘卯花墻
・油滴天目茶碗(大阪市立東洋陶磁美術館)
・曜変天目茶碗(静嘉堂文庫)
・井戸茶碗 銘喜左衛門(孤篷庵)

・楽焼白片身変茶碗 銘不二山
・曜変天目茶碗(藤田美術館)
・曜変天目茶碗(京都・龍光院)
・玳玻天目茶碗(相国寺)


特別展『茶の湯』関連サイト

公式サイト:http://chanoyu2017.jp/
1089ブログ:http://www.tnm.jp/modules/rblog/index.php/1/category/86/
東京国立博物館お知らせ:http://www.tnm.jp/modules/r_free_page/index.php?id=1828#info
作品リスト:http://www.tnm.jp/modules/r_exhibition/index.php?controller=item&id=4959

特別展『茶の湯』イベントカレンダー

講演など

無料(展覧会の観覧券は必要)、当日指定券配布

4月15日(土) 13:30-15:00:講演会「桃山の茶陶」
5月13日(土) 13:30-15:00:講演会「茶の湯の魅力」
5月17日(水) 13:30-14:30:落語
5月21日(日) 13:30-16:00:シンポジウム「茶の湯を語るーヒトから、モノから」

呈茶席

観覧券のほか500円(菓子付)で、お抹茶を頂くことができます。
下記各日9:30受付開始、11:00から15:00ごろ、平成館ラウンジにて。
茶道をやっていないと、各流派の方が点てたお茶を頂く機会なんてめったにありません。
お寺さんや庭園で頂けるところもありますが、各流派の看板を背負って点てているわけではないですから、今回はかなりレアな機会です。

4月18日(火) 表千家不審庵
4月20日(木) 武者小路千家官休庵
4月21日(金) 藪内燕庵
4月22日(土) 江戸千家宗家蓮華庵
4月23日(日) 東京芸術大学裏千家茶道部
4月25日(火) 大日本茶道会
4月27日(木) 江戸千家
4月28日(金) 遠州茶道宗家
4月29日(土) 茶道宗偏流不審庵
4月30日(日) 裏千家今日庵

関連記事:茶碗鑑賞の基礎知識

1.基礎:茶碗の種類や名称を豊富な写真で
2.基礎:茶碗鑑賞のポイント、用語集
3.名椀・国宝茶碗一覧
4.名椀・重要文化財の茶碗一覧
5.近代・現代の茶碗
おまけ:国宝と重要文化財に指定された茶碗一覧。観賞用全リストPDFあり
東京都内で茶碗・茶陶の鑑賞ができる美術館・博物館一覧

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※茶碗画像は『特別展 茶の湯 図録』より

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