トーハク『運慶展』観覧レビューと見所解説・仏像一覧

東京国立博物館『特別展・運慶』初日に行ってきたのでレビューと仏像目録

最終更新日:2017年10月3日

東京国立博物館で開催している『運慶展
正式には『興福寺中金堂再建記念特別展 運慶』に行ってきました。
初日の朝一でしたが、予想よりは混んでいないです。

※敷地内の「表慶館」にて『フランス人間国宝展』も11月26日まで開催しています。
チケットは表慶館内でも購入できるので、運慶展の後に気が向いたら行くこともできます。
ただ、割引等はありません。別途1,400円観覧料がかかります。

全体の感想とみどころ

展示作品の配置に余裕があるので、そこそこ混んでいても問題なく拝見できます
混み具合にはあまり気にせずに行っても問題ないでしょう。

全体として、目玉となる超有名な仏像は、360度全周囲から拝見できるようになっています。
仏像を後ろから見る機会は貴重です。
特に鎌倉彫刻はダイナミックな動きや装飾が特徴なので、後ろから見ても楽しいです
多くの仏像が、手を伸ばせば触れることが出来るほどの距離にあります。

ひとつひとつにスペースを十分とってあります。
その分展示されている仏像の数はおよそ30数点(展示替えあり)と多くはありません。
数でごまかすのではなく、質で勝負の展覧会です。
なんと、展示されている仏像は1体を除き、すべて重要文化財か国宝に指定されています
仏像を信仰の対象として拝見される方も、美術・文化財として鑑賞される方も、きっと満足できる内容・配置になっています。

展示されている仏像の一覧と、運慶展の見所をご紹介します。
仏像写真には著作権があるので、残念ながらここに仏像写真を載せることが出来ません。
是非、実際に実物を見に行きましょう。
音声ガイドの声優さんの声も素敵でした。

あと、ところどころ壁に「展示されていない運慶作品」の写真と説明が貼ってあります。
その写真も合わせれば、運慶作品のほぼすべてをみることができます。

展示してある(展示替え含め通期で)運慶作の仏像は22体
うち、下記表でピンク色にしてある、16・17・27は、運慶作であることが100%確実とは言えない仏像です。

仏像一覧とみどころ

展示されている仏像の一覧とみどころを、展示順にご紹介します。
一覧表の番号(No)は、運慶展目録の番号です。
名称を青い字にしているのは特に有名な仏像です
運慶展の目録から、仏像だけを一覧にしました。

第1章 運慶を生んだ系譜 − 康慶から運慶へ

No作者名称指定所蔵時代
1 阿弥陀如来および両脇侍坐像(3躯) 重文 奈良・長岳寺 平安時代・仁平元年(1151)
2 毘沙門天立像 重文 東京国立博物館蔵
奈良・中川寺十輪院伝来
平安時代・応保2年(1162)頃
3 康慶作 地蔵菩薩坐像 重文 静岡・瑞林寺 平安時代・治承元年(1177)
4 運慶作 大日如来坐像 国宝 奈良・円成寺 平安時代・安元2年(1176)
6 運慶作 仏頭 重文 奈良・興福寺 鎌倉時代・文治2年(1186)
7 康慶作 四天王立像(4躯) 重文 奈良・興福寺
(仮講堂安置)
鎌倉時代・文治5年(1189)
8 康慶作 法相六相坐像(6躯) 国宝 奈良・興福寺 鎌倉時代・文治5年(1189)

※No.1の「阿弥陀如来・観音菩薩坐像」は、10月29日までの展示
※No.3の「地蔵菩薩坐像」は、10月31日からの展示

第1章は、運慶が本格的に活躍する前、父康慶と運慶が若い頃の時代の作品です

No1.『阿弥陀如来および両脇侍坐像』は、「玉眼」が使われた最古の作例であると言われています。
玉眼とは、眼に水晶の板をはめ込み、より本物の眼のように見せる技法です。
鎌倉彫刻の一般的な技法ですが、平安末期1151年の本像が最初(現存し制作年代がはっきりわかっている中で)。
本像は平安期から鎌倉期への移行の途上で、鎌倉彫刻の特徴が出始めている作例です。
慶派の作品ではありませんが、運慶の父康慶の流派である奈良仏師の作例です。

最初の目玉作品は、運慶の最初の作品No.4『円成寺・大日如来坐像
真言密教の中心仏である大日如来で、智拳印を結ぶ典型的な姿。
運慶20代のころの作品で、父康慶の指導のもと、代価を得てプロとして挑んだ最初の作例。
時代もまだ平安時代、仏師の流派としても、慶派というよりは奈良仏師の時代。
安置されている奈良の円成寺は、奈良市外から柳生の里のほうに向かう街道の途中にあります。
この大日如来坐像も普段は円成寺多宝塔の中に安置されていて、格子越しにしか拝見出来ません。
360度全周囲からこんな近くで拝見できるのはすごい。

No.6 『仏頭』は有名な興福寺山田寺仏頭(ブッダヘッド)ではもちろんなくて、運慶作、興福寺西金堂に伝来した釈迦如来の頭部です。
南都焼討後の再建時に活躍した運慶が造像しましたが、江戸時代の火事で燃えてしまい、頭部や手首など一部だけが残りました。
こんなに大きな釈迦如来像を運慶が造っていたとは知りませんでした。

第2章 運慶の彫刻 − その独創性

No作者名称指定所蔵時代
9 運慶作 毘沙門天立像 国宝 静岡・願成就院 鎌倉時代・文治2年(1186)
11 運慶作 阿弥陀如来坐像
および両脇侍立像(3躯)
重文 神奈川・浄楽寺 鎌倉時代・文治5年(1189)
12 運慶作 不動明王立像 重文 神奈川・浄楽寺 鎌倉時代・文治5年(1189)
13 運慶作 毘沙門天立像 重文 神奈川・浄楽寺 鎌倉時代・文治5年(1189)
15 運慶作 地蔵菩薩坐像 重文 京都・六波羅蜜寺 鎌倉時代・12世紀
16 運慶作 大日如来坐像 重文 東京・真如苑真澄寺 鎌倉時代・12~13世紀
17 運慶作 大日如来坐像 重文 栃木・光得寺 鎌倉時代・12~13世紀
18 運慶作 八大童子立像(6躯) 国宝 和歌山・金剛峯寺 鎌倉時代・建久8年(1197)頃
19 運慶・湛慶作 聖観音菩薩立像 重文 愛知・瀧山寺 鎌倉時代・正治3年(1201)頃
20 運慶作 無著菩薩立像・世親菩薩立像(2躯) 国宝 奈良・興福寺 鎌倉時代・建暦2年(1212)頃
21 四天王立像(4躯) 国宝 奈良・興福寺
(南円堂安置)
鎌倉時代・13世紀
24 運慶作 大威徳明王坐像 重文 神奈川・光明院
(金沢文庫管理)
鎌倉時代・建保4年(1216)

※No.11「阿弥陀如来坐像および両脇侍立像」は、10月21日からの展示

第2章は、運慶全盛期。
奈良仏師でありながら、東国の鎌倉幕府や関係者とつながり、カリスマ仏師として活躍したことがわかります。
庶民によりそい続けた快慶とは対照的(本展覧会に快慶の作品はありません)。

No.9毘沙門天立像は凄い
表情や造形が素晴らしい。一番好きな毘沙門天かもしれない。
東国で活躍する運慶の、東国における最初の作例です。
この像には、運慶が古典を学習していた証が出ています。
甲冑の装飾は奈良時代の神将像、顔の表現は中国に神将像の影響がみてとれるそうです。
腰のひねりがいいですね。
後ろからみて美しいのも、運慶はじめ鎌倉彫刻の魅力です。

No.18八大童子立像も超有名。
高野山に安置されています。

そして世界に誇る肖像彫刻の頂点としてあまりにも有名なNo.20 『無著・世親立像
説明不要。見ればわかります。

第3章 運慶風の展開 − 運慶の息子と周辺の仏師

No作者名称指定所蔵時代
25 観音菩薩立像・勢至菩薩立像(2躯) 重文 京都・清水寺 平安~鎌倉時代・12〜13世紀
26 多聞天立像 京都・東福寺 鎌倉時代・12〜13世紀
27 運慶作 重源上人坐像 国宝 奈良・東大寺 鎌倉時代・13世紀
28 観音菩薩立像・地蔵菩薩立像(2躯) 重文 神奈川・満願寺 鎌倉時代・12~13世紀
29 四天王立像(4躯) 重文 京都・海住山寺 鎌倉時代・13世紀
30 毘沙門天立像
吉祥天立像
善膩師童子立像
(3躯)
重文 髙知・雪蹊寺 鎌倉時代・13世紀
31 神鹿(2躯) 重文 京都・高山寺 鎌倉時代・13世紀
32 子犬 重文 京都・高山寺 鎌倉時代・13世紀
33 湛慶作 善妙神立像 重文 京都・高山寺 鎌倉時代・13世紀
34 湛慶作 千手観音菩薩坐像光背三十三身像のうち
迦楼羅・夜叉・執金剛神(3躯)
国宝 京都・妙法院(三十三間堂) 鎌倉時代・建長6年(1254)
35 康弁作 天燈鬼立像・龍燈鬼立像(2躯) 国宝 奈良・興福寺 鎌倉時代・建保3年(1215)
36 十二神将立像のうち
辰神・巳神・未神・申神・戌神(5躯)
重文 東京国立博物館蔵
京都・浄瑠璃寺伝来
鎌倉時代・13世紀
37 十二神将立像のうち
子神・丑神・寅神・卯神・午神・酉神・亥神(7躯)
重文 東京・静嘉堂文庫美術館蔵
京都・浄瑠璃寺伝来
鎌倉時代・13世紀

※No.7「重源上人坐像」は10月7日からの展示

最後の第3章は、運慶の息子など、次世代を担う慶派仏師の活躍。

超有名なNo.27「重源上人坐像」は、10月7日からの展示です。
お目当ての方は気をつけましょう。

No.35「天燈鬼・龍燈鬼」はあまりにも有名ですが、こんな近くで拝見できるとは。。
お尻に注目です。
ふんどしや筋肉の造形が凄い。


特別展「運慶」公式サイト

運慶についてもっと知りたい方は、次の記事をご覧ください。

図録ほかミュージアムショップ

※図録表紙と運慶展チケット半券。表紙の仏像は「無著菩薩立像」の横顔

図録は3,000円です。
ちょっとお高いですが、中身は「運慶の仏像写真集」としてクオリティが高いです。

ほかミュージアムショップでは、トートバッグ仏像フィギアなど関連グッズがいっぱい。
私はフィギアにはまったく興味がないので買っていませんが、トートバッグはシンプルなデザインで普段使いも出来そうでした。

もう1展、規模は小さいですが、神奈川の金沢文庫で『特別展 運慶ー鎌倉幕府と霊験伝説』が開催されます。
2018年1月13日〜3月11日まで。
運慶の全貌をさらに知るには、年明けに金沢文庫に行きましょう。
金沢文庫は「称名寺」という素敵なお寺さんにあります。
展覧会がなくても拝観したい素晴らしいお寺さんなので、年明けは是非。

仏像フィーバーは来年春まで続きそうです。

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